あいにくの天気だが、私は気にはならなかった。 それより、初めてここへ来る、友のことがちょっと心配になった。 送ったメールには、この店のアドレスは記さず、 よく知っている公園の場所からの行き方だけを書いたから。 公園のかどを曲がり、ひとつの目の信号を渡ったら あとはひたすら、西へ向かって歩いてきてね。 晴れた日はデッキの席をとり、夕方だったらカウンターに座るのもいい。 けれど、今日みたいに、ふたりで来るのなら、 このテーブル席が空いていればいいなあと思っていた。 ここからは、天井から吊られたモビールがよく見える。 陽が傾きかけたとき、ゆっくりと光るそれらは ガラスなのかな、アクリル板なのかなと思っていたが、 何度目かに来た時に、sea glass を使って作ったものなのでは と、急に気がついたのだった。 モビールは微妙なバランスを保ちながら、ゆっくりと動く。 どこからも風など、入ってきていないのに。 モビールはときどき光る。太陽も出ていないのに。 Pealla Seabottom Style スタッフが着ているTシャツの背中には メニューが書かれている。 今日食べるのは「海の底風パエリヤ」と決めている。 ひとり分でも、もちろん作ってくれるけれど、 これは二人以上で食べたい料理だもの。 パエリヤ鍋は平たいので、サフランライスの中からのぞいている貝は、 海の底というよりも、浅い砂地の中に居るみたいに見える。 ゆったりと動いているモビールを見ていたら、その気持ちが 何かに似ている、と思った。 それは、砂浜で寝そべって、あるいは、あおむけでぷかぷか水に浮きながら、 流れてゆく雲を見ているときの気持ちと同じなのだった。 このお店の名前は、SUBMARINE DINER きびきび動くスタッフは、お揃いのTシャツを着ています。 |
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