テイクアウトできるメニューは2つあるけれど、 ほんとにテイクアウトするときも、店のデッキで食べる時も、 ホットドッグの方を、いつも選ぶ。 この店のホットドッグの特徴は、長いこと。 大きいというよりも、長いのだ。 ついている名前だって、なんだか長い。 「ホットドッグをひとつ」と、最初に注文したとき、 「アトランティック・ロングボート・ホットドッグですね」と ウエイトレスは、明るく確認を求めてきた。 オレは何を言われたかわからず、無言で彼女の顔を見た。 すると彼女はくるっと背中をむけ、これのこと、と言うように 腕を回して、左手の人差し指で、自分の背中を指した。 Hotodog Atlantic Long boat 彼女のTシャツの背中には、この店のメニューが載っていた。 確かに、上から2つ目は長い名前のホットドッグだ。 「ロングボートって、船のこと? ロングボードじゃないよね?(スペルがちがうものね)」 オレはデッキの端に立てかけたきた、自分のスケートボードの方を見ながら訊いた。 背中のメニューをわざわざ見せるその女の子と、すこし喋ってみたくなったのだ。 「あなたの、あのボードは、長い方のスケートボードでしょ? うちのホットドッグは、ボード=板じゃなくて、もちろん船のボートよ。 出来上がりを見てもらえればわかるけど、 【ボート】って言うイメージより、どっちかっていうと 【カヌー】みたいに見えるかも。 でもね、とにかくパンがおいしいの。もちろんソーセージもだけど。」 彼女はすこし早口でそう教えてくれたのだった。 デッキのパイプ椅子に、今日も、川の方を見て座る。 「アトランティック・ロングボート・ホットドッグをひとつ」 2回目からは、その時のスタッフが彼女でなくても、必ず フルネームで注文することにしている。 普通の2倍くらいの長いパンに、炒めたオニオンが敷かれ、 そこに茹であがったばかりのソーセージが、きちんとおさまっている。 いつ食べても、ソーセージとパンの、両方の味がちゃんと、する。 ほんとにうまい。 そして、いつでも、マスタードとケチャップの割合は 最初に言ったとおりの6:4になっている。 オレは、ひとくち齧って、手にしたそのドッグを 目の高さまで上げ、遠くに光る川の線に合わせてみた。 このお店の名前は、SUBMARINE DINER きびきび動くスタッフは、お揃いのTシャツを着ています。 |
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