ともだちと来るのも、ボーイフレンドと来るのもいいけれど、 このサラダを食べるときは、ひとりのときがいいし、 その時は、パンと、このサラダだけを注文する。 ポセイドンサラダ。 名前はとっても勇ましいが、出てくるサラダは、 海のかみさまのような、荒々しいイメージはどこにもないし、 見かけは、シーザーサラダに、よく似ている。 トッピングにイカを使っていることと、すこし大きめのクルトン。 レタスを中心とした葉っぱ類が、いつでも シャキっとしていることが、私はとても気に入っている。 ドレッシングは、控え目だが、味が野菜とよくなじんでいる。 シェフが、両手を使って、大きなボールの底から、持ちあげるように 野菜と、ドレッシングを合わせているところが、目に浮かぶよう‥ シェフの、名前も、顔も知らないのだけれど、 ある日、グリーン・マーケットで見かけた人が、 きっと「サブマリン・ダイナー」の料理を作っている人に違いないと、私は思った。 その理由は、2つある。 ひとつ目は、お店の中で、一度もその人を見たことがないのに、 ウエイターやウエイトレスが着ているのと同じ、 メニュー付きのTシャツを着ていたから。(しかも街中で) ふたつ目は、とても清潔そうな、きれいな指をしていたから。 グリーン・マーケットで、偶然に、おなじテントに私はいて、 その人が、ロメインレタスに手を伸ばしたところを、ちゃんと見ていたのだった。 Tシャツの背中の、メニューの最初は、この名前。 Salad of poseidon そう、私は、このサラダを食べながら、シェフに違いないあの人の、 きれいな指を思い浮かべ、話しかけてみる勇気が出なかったあの日のことを、 ひとりであれこれ思い返していたいのだ。 このお店の名前は、SUBMARINE DINER きびきび動くスタッフは、お揃いのTシャツを着ています。 |
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